ダウン症の特性

〇できそうで、できない。できなさそうで、できる。重要なのは「今」の積み上げ。
 ダウン症の人は、今、目に見えることにはとても良く反応し、模倣も上手で、相手に会わせること、気遣うことにも優れています。
人との関係も、みんなではありませんが上手に取れます。
話しかけるとわかっているかのように「うん、うん」と返事をすることが多いです。しかし、返事をするからといって、どれだけ理解しているかはわかりにくく、以外とわかっていないことが多くあります。
わかっているかのように「うん、うん」と返事をするのは、そうすると相手、特に親は嬉しそうにするからです。お母さんや相手が嬉しそうにする「今」は本人にとって何よりも重要なのだと理解できます。
ダウン症の人が新しい作業に取り掛かる時には指導員さんが丁寧に説明をしてくれ、とても上手にできました。次の日に昨日できたので、わかっていると思って、「きのうのようにやってね」と言うだけで進めると、できるとは限らず、大きなつまずきになり、修正がとても難しくなります。
きのうできたのに、「なぜ」今日できないの?「きのうと同じことでいいんだよ」は知的障害のある人にとって理解しにくい指示なのです。
理由は昨日のことをしっかりと記憶する力が弱いせいです。時間的経過を元に戻して物事を発想できる力が弱いということです。また、先をイメージする力も弱いため、見通しの見えないことに対しては動けなくなります。
「好きなことをすればいいよ」との声かけも見通しのない指示で、困ってしまうことを理解してほしいです。
でも、くりかえしの説明と、「今」という点を、丁寧に時間をかけ積み上げていけば、できていきます。一度、しっかり覚えたことはとても丁寧に続けることができますし、自己肯定感となり意欲にもつながります。
ダウン症は「頑固で、扱いにくい」という話を聞きますが、それは、ダウン症の特性ではなく、関わり方のまずさから起こるので、わかりやすく丁寧に繰り返し説明をすること、そして、待つこと、を心がけなければなりません。
最近、自閉症スペクトラムと診断されるダウン症の人が増えてきました。多分、今まで診断されなかっただけと思いますが、相談の中で、自閉傾向だと思うことはありました。症状が消えていくことが多かったのですが、いつまでも消えない人がふえてきた、とは思っています。自閉症スペクトラムを考慮して関わる必要があるかもしれません。「こだわり」について、現代人は常に時間に追われる生活をしていますが、ここは付き合うしかないと腹をくくることも必要でしょう。と、言いつつ根気のいる難しいことですが・・

また、合併症が多くあり、病気が原因で生活に支障が起こる二次障害的な症状も多くあります。
例えば、「怖がり」と一口に言っても、本来の慎重な性格なのか、目が見えにくい、耳が聞こえにくいことが原因なのか考えてみなければならないでしょう。
見えにくいことが、理解しにくい原因となっていて、動けないこともあるでしょう。そんな時は眼鏡が解決してくれることもあります。
「ちゃんと聞いていない」と思う時も補聴器を付けると解決する場合もあるでしょう。
成長とともに、歩きたがらない、動きが鈍いなども、甲状腺の検査が必要です。
最初のかかわり方(病的症状は取り除く等)を間違えると、能力が発揮しにくくなり、時として、パニックを起こし、その後の生活に影響してくるので注意が必要です。

〇理解力の例
私たちの生活の殆どは先をイメージし、どうしたら手順良く時短できるかを考え日常的に段取りばかりしながら「今」を生きています。結構複雑な思考を繰り返しているのですが、それが当たり前になっていて、そういう思考がとても苦手な知的障害の人を理解し、説明を繰り返す等の配慮をするのを、忙しさに追われ忘れてしまいがちです。
ダウン症の人は、性格は落ち着いていて、人との関係もとれますが、そういう思考が苦手なので、支援は生活全てに於いて、その子の能力を邪魔しない程度に必要ということになります。
例えば、食事は毎日必要なのに、調理って過程が結構複雑で思いのほか面倒なので、普通でも苦手な人が多くいます。
食べたいメニューを考え、できあがりをイメージし、いつ食べるかも含めて、材料の量を考え、購入し、調理にかかる時間を考えて準備をし、調理をして盛り付け、食べるという段取りをします。時には2.3日分も考えたりします。
一連の作業が多いうえ、時間を考慮しながら完成させることはダウン症の人はできない、とのデータが専門家からでています。多分、知的障害のある人全般に当てはまると思います。
自立生活をしている息子の元治も毎日、自分が食べたいメニューを考えて、ヘルパーさんに伝えることはできますし、お手伝いはしていますが、一人ではできません。
食事作りは難しいですが、生活全般に経験を積み上げることで、できることはドンドン増えていきます。経験することの重要さ、できるのに、させてもらえなくてできないことの多さに、改めて知的障害のある
人がちゃんと理解されていないことを痛切に思います。
できることを、できる時に有効に活用し、できないことはさっさと手伝い、本人の達成感や自己肯定感を持てるような工夫が必要です。この積み上げが生活力になっていきます。
知的障害があっても、学び続けたいと思っていることをわかることも付き合う上で必要です。
何でもやさしく手伝うことが、できる力を奪ってしまっているかも、と常に頭の隅においてほしいです。

〇支援つき意思決定とは、適度な支援を受けながら、決定するのは常に本人。

(参考: 東京学芸大学菅野敦先生(当時)・同志社大学鈴木良先生講演会資料)

〇知的障害のある人の苦手な思考
可逆的思考とは:可逆的思考には2つの柱があり、その一つは別な観点に立って物事を考えることができるようにすること。もう一つは、時間的経過を元に戻して物事を発想できるかどうかということです。一つの観点だけでなく、違った観点に立って物事を発想できるかどうかはいたるところで求められています。
可逆的思考ができるのは、7,8歳から(相補的思考)
ダウン症の人はこの壁を乗り越えにくいとのことです。